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実験結果がぶれるのはなぜ?
綿密な計画を立て、必要な試薬や装置を揃えて実験を実施したものの、再現性を確認しようと同じ条件で試みたところ、なぜか結果がぶれて再現性が得られない――。トラブルシューティングを行っても、さらに予想外の結果が出てしまう。研究に携わる方であれば、誰もがこうした「原因不明のぶれ」に直面した経験があるはずです 。
ここでは、実験結果がぶれる要因を整理し、その課題を克服するための新しいアプローチについて解説します。
「再現性」にまつわる論文
動植物や細胞といった「生きている対象」を扱う生命科学実験において、完全な再現性を確保することは極めて困難です 。再現性の欠如は、自身の研究内だけでなく、他者の論文の検証においても頻発しています 。
生物医学研究者を対象とした2024年の調査報告によると、以下のような実態が明らかになっています (1)。
23%の研究者が「自身が発表済みの研究の再現に失敗した」経験を持つ 。
47%の研究者が「他のチームが発表済みの研究の再現に失敗した」経験を持つ 。
自身の研究であっても2割近くの研究者が再現に失敗しているという事実は、この分野における再現性確保の難しさを如実に物語っています 。
「再現性」の確保を阻む要因
再現性が取れない要因は、大きく「素材的な問題」「手技的な問題」に分けて考えられます。以下の表でまとめてみます。
素材的な問題 | 手技的な問題 |
・(動物)活動量や食餌量、個体ごとの代謝の状態を完全に揃えるのが困難 ・(細胞)分化や代謝の状態を揃えるのが困難 ・(細胞)継代を重ねたことによる特性変化 ・(動物・細胞)遺伝子導入時の細胞毒性や免疫原性の差 ・(試薬)特にFBSやポリクローナル抗体などの動物由来の試薬は、ロット違いで成分(FBS)や反応性(抗体)が異なる ・(試薬、機器)リコール品の使用やパーツの不具合、ロット間差 | ・不安定なサンプルの調製および作製技術 ・試薬の相性(不適切な組み合わせ) ・プロトコルを逸脱した操作 ・不適切なサンプル、試薬の保存 ・コンタミネーション ・丁寧かつ正確なピペッティング操作ができていない ・(微生物や細胞の培養)適切な培養操作、実験判断ができていない |
こうした不確定要素があるにもかかわらず、現場における培地交換やサンプリングのタイミング判断は、依然として顕微鏡による「目視」に頼る部分が少なくありません。もちろん、遺伝子やマーカーの発現を確認する手法も併用されますが、これらは細胞を破壊して測定するエンドポイント解析であることが多く、日々の操作時期をリアルタイムに決定する指標としては活用が難しい側面があります。結果として、主観的な判断の介在がデータの不一貫性や再現性の低下を招く一因となってきました。
解析用のサンプリングの時期をどうやって揃えるか?
実験間での再現性を高めるには、細胞の状態を数値で可視化し、それに基づいてサンプリング時期を決定することが有効です 。具体的な指標として、細胞の主要なエネルギー源であるグルコースの消費量と、代謝副産物である乳酸の産生量から細胞状態を判断する方法があります 。
しかし、従来の濃度測定には実務上の大きな障壁がありました。まず、濃度測定のために複数のタイミングで培地をサンプリングすることは、手間がかかり現実的ではないだけでなく、コンタミネーションのリスクを必然的に高めてしまいます 。
さらに、サンプリングによって得られるデータはあくまで断続的な「点」に過ぎず、測定間における細胞の微細な変化を正確かつ総合的に把握し、状態の違いを判断することは困難でした 。
グルコースと乳酸濃度をリアルタイムで測定!PHCの「LiCellMo」
これらの課題、すなわちサンプリングに伴うリスクを排除しつつ、連続的な動態把握を実現するために開発されたのが、ライブセル代謝分析装置「LiCellMo」です 。
LiCellMoは、培地中に浸漬したIn-Lineセンサーにより、グルコースと乳酸の濃度変化をラベルフリーでリアルタイムに測定します 。サンプリングが不要になることでコンタミネーションリスクを大幅に低減するとともに、経時的な濃度変化を「点」ではなく「線」として可視化することが可能になります 。
濃度データに基づいて細胞操作やサンプリングの時期を実験間で統一することで、属人的な判断を排した一貫性のある評価体験を提供します 。培養プロセスの可視化と標準化に向けて、ぜひ「LiCellMo」の活用をご検討ください 。

PHC株式会社による検証データを掲載した、細胞培養に動態の視点を追加するLiCellMoのアプリケーションノートはこちらからご覧ください。
導入事例のご紹介
代謝解析に動態という視点を追加し、解像度を高める具体的な活用事例については、LiCellMoを用いた代謝分析の新たな視点を紹介した記事でも詳しく解説しています。以下からご覧いただけます。
参考文献
- Cobey KD, Ebrahimzadeh S, Page MJ, Thibault RT, Nguyen PY, Abu-Dalfa F, Moher D. Biomedical researchers’ perspectives on the reproducibility of research. PLoS Biol. 2024 Nov 5;22(11):e3002870. doi: 10.1371/journal.pbio.3002870. PMID: 39499707; PMCID: PMC11537370.
