細胞培養の基礎 その2 ~細胞培養の基本操作と注意点~

細胞培養の基礎 その2 ~細胞培養の基本操作と注意点~

細胞培養の操作は、その操作法や使用する設備、試薬も含めて数多くの試行錯誤を経て改善され、現在でもより良い方法の開発について研究が進められています。

細胞は​繊細である​ため、​わずか​操作の​違いが​性質の​変化や​生存率、​さらには​実験結果の​再現性に​影響を​与える​ことがあります。​

細胞培養の基本操作は、どのような細胞を扱う場合でも原則として一緒です。

ここでは、細胞の入手から培養操作、細胞の保存までの基本操作と注意点を解説します。

細胞培養の基本操作1~細胞の入手と培養開始の準備~

培養目的の細胞を得る方法としては、

(1)自身で組織、臓器、器官から初代細胞(Primary Cell、プライマリー細胞)を単離する

(2)初代細胞または株化された細胞の分与を受けたり、細胞バンクやメーカーから購入する

が主な方法です。

(1)は機械的な切断や酵素を用いた分離など、目的とする細胞によって最適な方法がプロトコルとして確立していることが多いため、その手順に沿って行います(ここでは割愛します。)

(2)は​目的細胞を​入手する​最も​簡単な​方法です。​注意するべき点と​しては、​①倫理面での​違反を​しない、​②海外から​輸入する​場合は​動物検疫や​法令、​国際条約に​違反しない、​③使用範囲や​譲渡条件など、​関連する​ライセンスに​違反しない、などが​挙げられます。

また特に分与を受ける細胞は、マイコプラズマ感染など汚染確認の有無について事前に確認したり、信頼ある供給元から入手することが重要です。

分与を受けた細胞は凍結保存されていることが多いため、ウォーターバスを使用して37℃の温水で迅速に解凍します。液体窒素保存(特に液相保存)されていた場合は、バイアル中に入り込んだ液体窒素が熱により膨張し、バイアルが破裂することもあるため、保護メガネなどの防護策を取ります。

細胞培養の基本操作2~培養作業~

解凍した後の細胞は、クリーンベンチ内で無菌的に操作します。使用する器具は滅菌済みの物を使用したり、マイクロピペットなどはベンチへ入れる前にエタノールで消毒します。操作する手、器材からの汚染に十分注意しながら培養操作をします。

培地に懸濁した細胞を培養器材に移す前には、顕微鏡や細胞数計測装置(セルカウンター)で細胞数を数えてから播種します。播種の際のピペッティングが不十分な場合、器材やプレートのウェル間で細胞数のばらつきが出たり、細胞塊が混ざるなど実験結果に影響するため、特に注意します。

播種後の細胞はCO2インキュベーターに入れ、温度(一般的に37℃)、湿度(一般的に95%程度)、CO2濃度(一般的に5%程度)が管理された庫内で培養します。定期的に倒立顕微鏡で細胞の状態を確認し、細胞の密度や培地の色などの状況を把握しながら培養します。増殖する細胞の場合は細胞密度やコンフルエンシー(Confluency)に注意して継代(サブカルチャー、Subculture)します。

細胞培養の基本操作3~細胞保存作業~

培養した細胞をすぐにアッセイに使用しない場合や、今後の実験で使用するためには、凍結保存用チューブに入れて保存します。

凍結保存の方法は細胞の種類によって異なりますが、主に「緩慢凍結法」「ガラス化凍結法」などの方法があります。液体窒素やプログラムフリーザーを使用し、細胞凍結保存液に入れた細胞を凍結します。

凍結した細胞は、液体窒素で保管したり、超低温フリーザー(ディープフリーザー)などで保管します。PHC株式会社バイオメディカ事業部では、液体窒素保存容器超低温フリーザーの両方を取り扱っています。

細胞培養の基本操作(番外編)~コンタミネーションの定期確認~

基本操作1で​記載した​マイコプラズマに​よる​汚染は、​細胞の​タンパク質産生や​増殖、​代謝に​影響を​与え、​実験の​再現性を​損なう​要因と​なります。​マイコプラズマ汚染されている​培養細胞の​割合には​諸説あり、​古い​データも​含まれますが、​15%~37%の​汚染率が​報告されています​(1)。

​ 再現性の​高い​実験データの​入手には、​マイコプラズマを​含むさまざまな​コンタミネーションの​定期的な​確認が​重要です。

​特に​細胞培養を​開始する​際、​マスターセルと​なる​元の​細胞を​準備する​段階では、​その後の​実験への​影響を​最小限に​する​ため、​マイコプラズマの​有無を​確認する​ことが​推奨されます。​

マイコプラズマ汚染の​確認法には​qPCRを​用いる​他、​目視で​検出する​試薬キットが​あります。​発見された​場合には​速やかに​除去試薬で​マイコプラズマを​除くか、​状況が​許せば​廃棄して​新しく​培養を​開始する​ことを​お勧めします。​

参考文献

  1. Corral-Vázquez C, Aguilar-Quesada R, Catalina P, Lucena-Aguilar G, Ligero G, Miranda B, Carrillo-Ávila JA. Cell lines authentication and mycoplasma detection as minimun quality control of cell lines in biobanking. Cell Tissue Bank. 2017 Jun;18(2):271-280. doi: 10.1007/s10561-017-9617-6. Epub 2017 Mar 2. PMID: 28255773; PMCID: PMC5429902.